1. あなたの無線LAN、不正に利用されていませんか? 他人のWi-Fiを利用する/されることの危険性

ケーススタディ【vol.16】

2015.11.24

あなたの無線LAN、不正に利用されていませんか? 他人のWi-Fiを利用する/されることの危険性

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今年6月、愛媛県で他人の無線LAN(Wi-Fi)を勝手に使ったとして、30歳の男性が電波法違反容疑で逮捕されました。自宅付近に飛んでいるWi-Fiに無断で接続し、インターネット通信を行ったということです。
( 参考記事:狙われる自宅の無線LAN ただ乗り簡単、犯罪に巻き込まれる可能性|産経ニュース)

この男性は、コンピュータ雑誌の付録ソフトを使ってWi-Fiのパスワード解析をしたり発信元を隠蔽してインターネットバンキングで送金したりするなど、行為そのものがもちろん悪質ではあったのですが、摘発の理由は無線LANの「ただのり」。電波法の「無線通信の秘密窃用」に該当するとして逮捕されました。

今や、私たちの身近な存在である無線LAN。今回は、あなたが「被害者」や「加害者」、さらには「犯罪者」になってしまう危険性についてお伝えします。

 

他人のWi-Fiにつないだだけで訴えられてしまう!?

外出先でノートパソコンやスマートフォンを開いてみると、鍵がかかっていないWi-Fiが飛んでいる。「ちょっとつないでみようかな」と、他人のWi-Fiを選択してネット回線を無断で拝借したことがある方は、意外といるのではないでしょうか?

特に、オフィスビル・商業地・マンションなどの人口密集地では、無数のWi-Fiが飛んでいます。そのなかには、パスワード不要でつながってしまうWi-Fiもあるでしょう。

無線LANルーターは初期設定でパスワードが必須のため、こういったパスワード非設定のWi-Fiは減ってきました。しかし数年前までは、初期設定時にパスワード不要の機器が多くあったのです。筆者も、「パスワードはあとで設定しよう」と自宅の無線LANルーターのパスワードをしばらく設定せずに使っている時期がありました。

無線LANルーターの寿命は、3年から長くても10年と言われています。新しい機器に完全に入れ替わるまで、あと数年はカギのつかないWi-Fiが各所に飛んでいると思われます。

実は、カギがかかっていない無線LANの場合は、接続するだけではすぐに違法行為とはなりません。しかし、だからといって他人の無線LANつないでデータの送受信をしていると、「業務妨害」などを理由に民事訴訟を起こされる可能性があります。くれぐれも気をつけましょう。
(参考記事:隣家の無線LANの電波でネット接続したら違法なの?|IT pro)

 

自宅でも公衆無線LANでも情報漏えいに注意! 知らないうちに被害者になる可能性が

もし、あなたの自宅や職場の無線LANを他人に勝手に使われてしまったら、どんな危険があるのでしょうか?

たとえば、相手に悪意がなかったとしても、もしあなたが共有ファイルなどの設定をしていれば同じネットワークに接続した相手のパソコンにあなたのファイルが丸見えになってしまうことがあります。そして、もしその相手に悪意があった場合、設定によってはあなたのパソコンに侵入してデータを盗み取る、または通信を傍受してデータを収集するといったことが可能です。

昨年のニュースですが、成田・関西・神戸空港の無料公衆無線LANサービスで、同じネットワークに接続している他人のパソコンの通信が傍受できることがわかり、パスワード不要のフリーWi-Fiの危険性が問題視されました。
(参考記事:無線LANのメール丸見え 成田・関西・神戸の3空港 |日本経済新聞)

上の記事の中では、無線LANは「暗号化すればのぞき見を防止できる」と書かれていますが、これは間違っています。共通のパスワードを用いるタイプの公衆無線LANでは、共有のパスワードでいったん接続できてしまえば、暗号化していても通信を簡単に傍受できてしまいます。
(参考記事:無線LANを暗号化すればのぞき見されないという誤解|Life with open mind)

同じ無線LANを共有するということは、情報がだだ漏れになる可能性があるということです。まずは、自宅の無線LANには必ずパスワードの設定を行ってください。公衆無線LANは、パスワードのないものはもちろん、共有のパスワードを使うものも極力避ける方がよいでしょう。

また、止むを得ず公衆無線LANサービスを利用する場合には、以下の点に気をつけてください。

・パスワードなしのファイル共有がないことを確認する
(Windowsの場合は、「ネットワーク上の場所」をパブリックに設定すると便利です)(参考記事:ネットワーク上の場所を選択する|Microsoft)

・ウェブ閲覧にて個人情報を入力する場合や、メールの送受信をする場合はSSL(TLS)暗号化されていることを確認する

 

無線LANがただのりされたら……? 知らずに加害者になって逮捕されてしまう可能性も

冒頭で紹介した、無線LANをただのりして逮捕された事件ですが、逮捕された男性はそのインターネット回線でインターネットバンキングの送金を行っていました。

なぜ、この男性はわざわざ他人のインターネット回線を使ったのか?
それは、他人になりすますためです。

あなたの自宅の無線LANをただのりされたときに最も恐ろしいのが、あなたが加害者になってしまう可能性です。
ただのりをした悪意ある者が、不正送金・スパム行為・ハッキング・PCの遠隔操作などを行った場合、それがあなたの仕業でないことを立証するのは困難です。もし悪質な事件に関わってしまった場合、あたなは逮捕され、パソコンは証拠物として押収され、さらには冤罪を着せられる可能性すらあるのです。

自らの身を守るためにも、自宅の無線LANには必ずパスワードを設定しておきましょう。

 

まとめ

とにかく、押さえておくべきは以下の3点です。

① 自宅の無線LANには必ずパスワードを設定する
② 他人のWi-Fiを無断で使わない
③ パスワード不要、あるいはパスワード共有の無料公衆無線LANサービスでは、情報がだだ漏れになる可能性があることを理解する

近年の外国人観光客の増加、さらには2020年の東京オリンピック開催に向けて、今後ますます街にWi-Fiが溢れてくるでしょう。そんな身近な無線LANに、実は危険が潜んでいる、ということを覚えておきましょう。

 

k_kitano北野 啓太郎(きたの・けいたろう) フリーライター
1980年代のパソコン黎明期よりコンピュータを愛し、90年代後半のインターネット普及とともにその想いは加速。音楽業界でウェブマガジン編集長を経歴し、現在フリーランスとしてライター、映像編集など多業界で活動中。コンピュータのウィルス感染に加え、実生活では空き巣にやられた経験も持つ。NO SECURITY, NO LIFE.
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