1. マイナンバー制度って知ってる? 一般生活者が知っておくべきマイナンバーの情報漏えいリスクとは|セキュリティのプロ “まるちゃん” インタビュー

プロに聞く【vol.05】

2015.07.16

マイナンバー制度って知ってる? 一般生活者が知っておくべきマイナンバーの情報漏えいリスクとは|セキュリティのプロ “まるちゃん” インタビュー

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2016年1月、あなたは国から番号を付けられます!

いよいよスタートするマイナンバー制度。CMやポスターを見て「名前は聞いたことあるけれど、実際は何がどうなるの?」と疑問に感じている方は多いのではないでしょうか?

実は、マイナンバー制度には大きな情報漏えいリスクが潜んでおり、正しい理解がなければ大変な被害に繋がってしまうかもしれません。会社の経理・総務担当者などは既に対応を進めているかと思いますが、私たち一般生活者はどれだけの準備ができているでしょうか?

今回は、マイナンバー制度に詳しい デロイトトーマツリスクサービス株式会社 代表取締役社長の丸山満彦氏に、マイナンバーが私たちの生活に与える影響とその情報漏えいリスク、そして「マイナンバーの流出を防ぐために私たちが注意すべきこと」についてお話を伺いました。

丸山 満彦(まるやま・みつひこ) デロイトトーマツリスクサービス株式会社 代表取締役社長
デロイト トーマツ リスクサービス株式会社の代表取締役社長。過去には内閣官房情報セキュリティセンター情報セキュリティ指導官などセキュリティ分野の要職を歴任。現在はデロイトトーマツサイバーセキュリティ先端研究所の所長も兼務している。セキュリティのプロ「まるちゃん」としても知られる。

 

一般生活者も仕組みを理解して、正しく判断できる必要がある

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そもそも「マイナンバー制度」とは何ですか?

マイナンバー制度とは、住民票を有する全ての人に1人1つの番号を付けることで、「税」「社会保障」「災害対策」の分野で効率的に情報を管理できるようにする制度です。2016年1月より、12桁のマイナンバーが記された「個人番号カード」が国民全員に交付されます。

目的は、「公平・公正な社会を実現する」こと。例えば、国民の所得をちゃんと把握して税金の徴収漏れをなくす、などです。生活保護などの不正受給をなくすことで、社会保障を本来あるべき形に正しましょう、というわけですね。

(参考:マイナちゃんのマイナンバー解説|マイナンバー社会保障・税番号制度)

 

「税金の徴収漏れ」とは?

例えば、サラリーマンであっても副業をしている方がいますよね。フリーランスの方にも、申告していない収入があるかもしれません。それらの収入も含めた “全体のお金の流れ” を把握できるようになるのです。
ただし、農業など現金収入を得ている場合は、引き続き把握しづらい状況が続くかと思いますが。

 

一般生活者も、マイナンバー制度の詳細を知っておく必要があるのでしょうか?

もちろんあります。マイナンバーの利用目的は「税」「社会保障」「災害対策」という3つの分野に “限定する” と法律で決まっているのですが、そのことを知らなければ悪用されても気づけませんよね。

なので、もしあなたの勤め先や取引先などからマイナンバーを求められたら、「利用目的は何ですか?」と確認するようにしてください。目的以外のことに使われないか? 漏えいや改ざんがないようしっかり管理してもらえるか?
マイナンバーを提出する側も、仕組みを理解して判断できるようになる必要があります。

 

利用目的から考えると、「勤めている1社からしか収入を得ていない」という場合、マイナンバーを使うタイミングはほとんどないのでは?

そうですね、最初に自分のマイナンバーを申請すれば、その後は基本的に提出するシーンはないでしょう。
ただし、転職するときや結婚・出産などで扶養家族を申請するときにも、社会保障が関わるので必要になりますね。

 

生まれたばかりの赤ちゃんにもマイナンバーは届くのですか?

そうですね。出生届を提出して役所が住民票をつくる際に付番されます。追って「通知カード」が郵送されるので、親がそれを管理することになります。

 

「通知カード」とは? 「個人番号カード」との違いは?

まず初めに届く「通知カード」を役所に持参することで、マイナンバーが記された「個人番号カード」が発行されるという仕組みです。

今回の施行開始時も、今年10月にまず住民票を有するすべての人へ紙製の「通知カード」が各市区町村から郵送されてきます。そして2016年1月以降にそれを持って役所へ申請することで、ICチップのついた顔写真入り「個人番号カード」を受け取ることができるのです。
そして基本的には、マイナンバーを利用する際は「個人番号カード」を提出することになります。

<POINT>
● 「税」「社会保障」「災害対策」の3分野における情報管理のため、2016年1月より施行
● 「通知カード」が今年10月に郵送され、それを持って役所へ申請することで「個人番号カード」を受け取ることができる
● マイナンバーを利用する際は、「個人番号カード」を提出する

 

【生活に与える影響は?】マイナンバーが無いと給与がもらえない!

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施行後は、一般生活者にどんな影響が起こるのでしょうか?

まず、正社員でもアルバイトでもマイナンバーがないと働けなくなります。企業が給与を支払うときにはマイナンバーを収集する必要があるので、従業員からの提示がないと給与を支払えない、ということになってしまいます。

 

全員宛に郵送されてくるとのことでしたが、マイナンバーを受け取れない状況が起こり得るのですか?

例えば、住民票の住所と現住所が一致していない場合。「通知カード」は住民票の住所へ送られてくるため、現住所と異なる人は受け取れない可能性があります。
引越し後の申請をただ忘れているだけなら良いのですが、中には事情があって移せない人もいるわけです。DVを受けていたり、離婚ができず別居したりという方などですね。

住民票の家に通知カードを取りに行けない場合、マイナンバーを受け取れない状況が起きるかもしれません。該当する方は、なるべく早めに役所へ相談に行っていただきたいと思います。

 

「税」「社会保障」「災害対策」の3分野のみの利用であれば、あまり普段の生活に影響は出ないのでは?

いや、将来的には適用範囲が広がるだろうと言われています。例えば、「医療」分野。
カルテを電子化して、患者の病歴や服用している薬などを全てマイナンバーで管理する話は既に検討され始めています。そうなれば、街で意識不明になって倒れている人がいても、その人のマイナンバーから抱えている病気やアレルギーなどが検索でき対応が早くなるわけです。

他にも、薬の処方方法をチェックすることで医療費の削減にも繋がるかもしれません。医療費は基本的に7割を国が負担しているわけで、社会保障の問題にも関わってきますからね。

 

医療以外にも、マイナンバーの利用を検討している分野はありますか?

あとは「銀行」ですね。マイナンバーと預金口座や証券口座が結びつけられることで、個人の資産が全て国によって丸裸になります。新たな銀行口座をひらく際に、マイナンバーの登録が任意で始まることが先日閣議決定されました。数年後には申告が必須になる見通しのようです。

 

それはとても恐ろしいことだと思うのですが、目的は?

「誰がお金を得て、それがどう動いたのか」というお金の流れを把握できる仕組みをつくるためでしょうね。一番は、犯罪で得た収益を隠蔽するマネーロンダリング(資金洗浄)対策だと思います。なので、まっとうに生きている人にとっては、特に大きな影響が出るわけではありません。

 

例えば「銀行が病院の電子カルテを見る」など、分野を越えたデータの共有ができるのでしょうか?

それはできません。共通のデータベースで一元管理するのではなく、分散管理するので管轄外の情報は得られなくなっています。

<POINT>
● マイナンバーがないと働けなくなる(給与が受け取れない)
● どうしても住民票が移せないという方は、至急役所へ相談に行くこと
● 将来的に「税」「社会保障」「災害対策」以外の分野でも利用が検討されている

 

悪徳名簿屋に知られると大変なことに! マイナンバーの情報漏えいリスクとは?

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もし自分のマイナンバーがネットなどで漏れてしまった場合、どんな危険が想定されるのでしょうか?

悪徳名簿屋に漏れたときは怖いですね。マイナンバーをキーにすることで、同姓同名の人がいたり結婚して名字が変わったりした場合でも、個人を特定できることになります。訳あって名前を変えて引越しもして、「これから新しい生活を始めるぞ!」という人がいたとしても、マイナンバーで追うことができるんです。

マイナンバーは一生変わりません。悪徳名簿屋が持っている情報の一つひとつは大したことのない内容でも、マイナンバーを元に複数の情報を「名寄せ」することで、その人の経歴や家庭・職場についてなど、重要な情報が見えてくる可能性があります。

 

そんな場合でも、マイナンバーを変更することはできないのですか?

漏えいなど大きな危険があると認められた場合には、変更申請することができます。ただし原則は、生涯同じ番号を使うことになっています。

<POINT>
● 悪徳名簿屋がマイナンバーをキーに情報を「名寄せ」することで、重大な情報漏えいに繋がる可能性がある
● マイナンバーは生涯同じ番号であることが原則だが、漏えいなどで危険性がある場合には変更することができる

 

【マイナンバー漏えい対策】間違ってもSNSには載せないこと!

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自分のマイナンバーを守るために、今私たちができることは何ですか?

まずは「住民票の確認」ですね。まだ登録が現住所になっていない場合は、すぐに変更してください。10月の通知カードが郵送される段階で、いきなり他人の手に渡ってしまうことになります。

 

通知カードを受け取った後の注意点は?

通知カードが届いたら、決して失くさない場所に保管してください。そしてマイナンバーの提出が必要な際は、自分の番号を間違えて登録してしまわないよう、必ず確認をする癖をつけてもらえたらと思います。

あとは、「むやみに他人に言わない」ことですね。先ほど伝えたように、悪徳名簿屋など間違った形で使われてしまう可能性がありますので。

それと当たり前ですが、くれぐれもTwitterやFacebookに写真やナンバーを投稿しないでくださいね。「通知カードが届いた!」と喜び勇んでブログやSNSにアップしちゃう人が現れるような気がして、心配しています……(苦笑)

 

例えばお店で、身分証明書として個人番号カードを求められることはありますか?

個人番号カードは顔写真入りですので、身分証明書としても使えます。ただしそのときは、裏面をコピーされないように気をつけてください。

カードの表面には顔写真・氏名・住所・生年月日などが記載されているため身分証明ができるのですが、裏面にはマイナンバーが記載されています。お店で渡す際には、裏面に付箋などを貼って隠しておくと安心かと思います。

 

「あなたのマイナンバーを教えてください」と提示を求められた際に、危険な相手を見極めるポイントはありますか?

利用目的を明確にしない人物は危険ですね。何度も言っていますが、最初は「税」「社会保障」「災害対策」以外の利用は法律で認められていません。
その相手は本当にマイナンバーが必要か? そしてきちんと管理してくれるのか? その点を明確にしない相手には気をつけましょう。

<POINT>
● 通知カードが郵送される前に、住民票を現住所に移しておくこと
● マイナンバーはむやみに他人に伝えない。間違ってもネット上にはアップしない
● 利用目的を明確にしない相手には絶対に教えないこと。

 

さいごに

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もうすぐ始まるマイナンバー制度。自分や家族の番号を漏えいしてしまうと、想像以上に大きなプライバシーの流出に繋がりかねません。

世間の知識や警戒がまだまだ低い初期段階では、悪用をもくろむ悪徳業者が狙ってくる可能性が特に高いはずです。まずはマイナンバー制度を正しく理解し、「自分のマイナンバーは漏えいさせない」という意識を強く持つようにしましょう。

k_kitano北野 啓太郎(きたの・けいたろう) フリーライター
1980年代のパソコン黎明期よりコンピュータを愛し、90年代後半のインターネット普及とともにその想いは加速。音楽業界でウェブマガジン編集長を経歴し、現在フリーランスとしてライター、映像編集など多業界で活動中。コンピュータのウィルス感染に加え、実生活では空き巣にやられた経験も持つ。NO SECURITY, NO LIFE.
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