1. 「うっかり」が招いた悲劇の1ページ。歴史から学ぶ情報漏えいの恐ろしさ

おもしろ【vol.06】

2016.01.04

「うっかり」が招いた悲劇の1ページ。歴史から学ぶ情報漏えいの恐ろしさ

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日本年金機構や大手企業から個人・顧客情報が流失したなどのニュースが連日報じられ、今や「情報漏えい」という言葉を耳にしない日はありません。

人類の歴史を振り返ってみても、ちょっとした情報漏えいが大きな悲劇を多くもたらしています。今回は、情報漏えいの恐ろしさを歴史上の事件から学んでみましょう!

 

うっかり漏れて大損害!「ディエップの戦い」

1942年8月19日にフランスで、「ディエップの戦い」と呼ばれる連合国軍による奇襲上陸作戦がおこなわれました。しかし、この奇襲作戦はひょんなことから敵国のドイツ軍に情報が漏れ、連合国側は大きな損害を受けてしまう結末に。

そもそも、目標が判然としておらず、とりあえず防御が薄い地域に6時間ほど攻撃をするというこの作戦は、同年7月4日以降の好天の日に決行されることになっていましたが、あいにく悪天候が続いていました。

「これじゃ奇襲作戦の意義がなくなるから中止しよう」と考えたのは、入念な準備で、堅実な作戦行動を起こすことに定評のある連合国軍の総指揮官・バーナード・モントゴメリー。しかし、良家のお坊っちゃまで、作戦を立てることが不得意なルイス・マウントバッテンの強固な主張のため、実施されることになります。

(出典:ルイス・マウントバッテン

もちろん、奇襲作戦であることから、作戦は情報統制のもと進められることになるのですが、作戦決行の2日前のロンドンで予想外の事態が起こりました。

イギリス軍の高級将校が、パーティーの席上で「明後日ディエップ攻めちゃうんだよね」と作戦内容を口外。その情報はすぐさまドイツ側に知れ渡ることになりました。ドイツ側は、防備を進めるとともに、さらに地域の防御が手薄に見えるような偽装工作をおこないました。

この情報漏えいにより、作戦当日に上陸した6,086人の連合軍は、逆奇襲の準備をしていたドイツ軍から強烈な反撃を受けることに。連合軍は3,894人の死傷者を出し、何の戦果も出さないまま撤退という惨憺たる結末を迎えたのです。

ちなみに、この情報漏えいをしてしまった高級将校の身元は判明しているにも関わらず、イギリスの上流階級や有力者に顔が効いたため、名前や所属は非公開、さらには処罰もされていません。

今も昔も、大人の事情というものは存在していたようです。

 

個人情報が飛び交う武士たちの戦争

日本でも、戦時における情報漏えいはいくつもあります。

なかでも、

「やあやあ、我こそは〜!」

と、武士が戦の際に敵に向かって自分の姓名・通称・身分・家系などの素性を自ら大声で主張するスタイルを、歴史の授業や時代劇などで見たことがある方も多いのではないでしょうか。

これを現代風に言えば、

「この度はお世話になります! 性は山田! 名は太郎! 42歳厄年! あだ名は濡れたカンパンです! しがないサラリーマンをやっております! 両親は共に実家で喫茶店を経営! 携帯電話の番号は090-1234-5678であります! いざ!」

などと、繁華街にて大声で叫ぶようなものでしょう。

また、かつてモンゴル帝国による「元寇」という日本侵攻がありました。「文永の役」、「弘安の役」と呼ばれる2度の侵攻は、当時の武士たちの活躍により退けられました。

その際、日本の武士が律儀に一騎打ちを挑もうと口上を述べている最中に、日本語がわからないモンゴル軍の兵士に一方的に攻撃されたという、悲しい逸話があります。

しかし、武士同士の戦いもモンゴル軍との戦いも、名乗ったのは敵へ向けてではなく、味方へ向けてだったと言われています。これは、自分の名前を覚えてもらうことで、戦の後に請求する恩賞の証人になってもらうためとのこと。

今も昔も、仕事に対するギャランティを貰い損ねると死活問題です。高楊枝を噛んでいるだけでは腹を満たせないということでしょう。

ただ、1人くらいは昔気質のベテラン武士がいて、「おれは20年もコレ一筋でやってきたんだよお!」などと軍勢の中から勇み出て、一騎打ちを申し込んでいる途中に弓矢で射られた男が絶対にいたはずです。

不器用な男が個人情報を自ら漏えいしながら華と散る光景を想像すると、歴史のスペクタクルを感じずにはいられません。

 

さいごに

ドイツ帝国の首相であるビスマルクは、

愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶことを好む

と語っています。

著者プロフィールの欄に個人情報満載の私が言えた義理ではありませんが、うっかり口を滑らせて情報漏えいしてしまったがために、結果として大変な悲劇を招くこともあります。悲劇を招かないためにも、情報漏えい事件も他人ごとと思わずに、普段から「自分ごと」として捉えていきたいですね。

 

k_ikeda加藤 広大(かとう・こうだい)フリーグラフィックデザイナー/ライター
都内在住のグラフィックデザイナー、ライター。30代を迎え、個人情報よりある意味いろんなものの漏えいを防ぐのに必死な今日この頃。
主に映画・音楽からオカルト、SF、酒、苔、不動産投資コラムまで、幅広く、そして若干胡散臭く、日々文章とデザインをお届けしています。
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